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三四郎

『三四郎』 / 夏目漱石(岩波書店)
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熊本よりも東京は広い。
 東京より日本は広い。
 日本より・・・・・・

と広田先生は三四郎に言う。
日本より、頭の中の方が、広いでしょう。

三四郎が熊本から上京する電車の中で出会う、
印象的なシーンだ。
三四郎は、これくらいの男は、東京に行きさえすれば
いくらでもいるのだろう、と思ってこのときは名前も聞かないのだが、
そうではないことに、後になって気付くのだ。

『三四郎』を読み終えたのは電車の中であったが、
読み終えて思ったのは、どことなく村上春樹の小説に近い部分がある、
ということだった。
『三四郎』は、熊本から上京してきた三四郎が、
東京で大学に通い、これまでつきあってきたことの無いような
様々な人々と出会い、「三四郎が成長する物語」であると思う。
しかし、三四郎の性格や人となりは、何か特別な事件があって
激変するわけでは、ない。
三四郎という主人公は、終始一貫しているようにも見える。
まっすぐで嘘のつけない男である。

しかし、気を抜くと見落としてしまいそうな箇所に、
確かに熊本から東京へ向かう電車の中とは
ずいぶん変わったな、と思うところがあちこちに出てくる。

成長とは、確かにそういうことなのかもしれない、と思わされる。


僕の、「それがいい小説か?」を決める個人的に大きな要因は、最後の2~3行である。
途中が少し読みにくく、「がんばって読んだ」位の小説でも、
最後の一文を読み終わった瞬間、
なんとも言えない余韻を残すような小説は、
あとで思い返したときに、
「ああ、いい小説だったな」
と思えることが、多い。

この、読み終わった後の、あぁ、読み終わった、
というえもいわれぬ余韻を味わうことは、
僕の読書の大きなモチベーションになっている。

『三四郎』は、その余韻が十分に味わえる小説であると思う。
by ton2_net | 2008-12-10 11:59 | 読書記録
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