昨日テレビで、
帝国ホテル総料理長の田中健一郎を紹介していた。
仕事をする時、一番大切なことは
基本を守り、一つ一つきっちりと積み上げていくことだと
田中は言う。
その一つ一つのうちの、どれか一つが欠けてしまうと
100-1=99ではなく
100-1=0
つまりそれまで積み上げてきた
99の手順も台無しになってしまうのだと
田中は言う。
以前日記で、料理研究家・辰巳芳子さんの
「平凡が 積み重なって 非凡に、至る。
それが 本物だと思う。」
という言葉を紹介したことがあったが
そこに通じるものがあるような気がする。
もう一つ印象的だったのは、彼の「さなぎの時期」の話だった。
田中の前の帝国ホテル総料理長は、村上信夫。
偉大な料理家であり、日本のフランス料理分野の開拓者。
そして、田中の子供時代からの憧れでもあった。
そんな大きな存在の後任を任された田中は、そのプレッシャーから「何をしていいのか分からない」状態に陥ってしまう。
ホテル側から改革を求められる一方で
部下たちの間からこんな声が聞こえてきた。
「あいつは、ムッシュ(村上信夫)じゃない。」
自分の仕事部屋にこもりがちになった。
そんな田中の窮地を救ったきっかけは、長女の一言だった。
「お父さんらしくないね。もっと自信をもちなさい。」
田中さんは言う。
「苦しいときの一番の支えは、やはり家族ですね。
家族の一言はかけがえのないものだ。
家族は何事においても原点であると思うし、そうあるべきだ。」
過去に、村上が田中に問うたことがある。
「今迄で食べた事のある、一番おいしかった料理は何か?」
あれか、これかと悩んで、とっさに答えが返せなかった田中に対して、村上は自分の答えを返した。
「この世で一番おいしい料理は、お母さんの作った料理だ。
素材や料理の腕よりも、『美味しいものを食べさせたい』という気持ちが入っているからだ。」
長いスランプを、「さなぎの時期」を乗り越えた田中は
今日本屈指の料理人と呼ばれるまでになった。
番組の最後を、田中はこう言って締めくくった。
「夢があるから、今までがんばってこれた。
夢があるから、これからもがんばっていける。
そして、仕事と、自分自身に誇りを持つことが
大切だと思います。」
将来を決める大切な時期に差し掛かっている。
どんな仕事に就くのかはまだ確定しているわけではないけれど、
「自分はこの道のプロフェッショナルだ」
と自信を持って、言えるような仕事がしたい。
この番組を見ると
いつもそう、思わずにはいられない。