1秒に勝る感覚

友人に、テレビの編集をしている女の子がいる。
最近、何人かと一緒に飲む機会があって、色々話を聞いてみた。

面白い話がいくつも聞けたのであるが、
一番びっくりしたのは、
「1フレーム単位で編集をする」という話である。

「特に、スポーツなんかは」とその女の子は言う。
「次のカットとのつながりで、1フレームあるか無いかで印象が変わって来たるするしね」。

ここで、「フレーム」という単位について説明しなくてはならない。
僕も曲がりなりにもテレビというものに関わって仕事をして初めて知ったのであるが、
テレビというのは、どうも”高速紙芝居”であるらしい。

なんとなく、静止画と動画は別物のように感じてしまうが、
動画は、なんのことはなく、
静止画をならべてぱぱぱっとスライドショーしているだけである。
当たり前と言えば当たり前で、パラパラマンガと同じですね。

で、今のテレビは1秒に30枚の静止画を並べて、
あたかもモノが動いているように見えている訳です。
その1/30秒の静止画一枚を「1フレーム」と呼ぶ。

1/30秒ですよ。0.03秒?
一枚、絵があろうがなかろうが絶対気づかないような気がするけど、
印象がやはり違う、とその女の子は言うわけです。

で、その基準は感覚で、「見ていて気持ちいいかどうか」だという。
すごい世界だなと思いませんか?
へぇ〜っと思いながら話に耳を傾けていた。


この話を聞いていて思い出したのが、
指揮者・岩城 宏之さんの『指揮のおけいこ』(文春文庫)という本。
ベルリンフィル、ウィーンフィルなど
数々のトップオーケストラで指揮した岩城さんが、
「指揮者って結局、何してんの?」を綴った名著です(大変面白かった)。

この中(pp.44-45)に、
指揮者が指摘する「遅い」とか「早い」という指摘について
具体的な数字を示した一節がある。

 リハーサルでの敷佐の仕事の何分の一かは、タイミングに関してである。
 「オーボエがちょっと早かった」
 「シンバルの出が少し遅いです」
 などと指揮する。

 この「ちょっと」とか「少し」がくせもので、具体的に数字で言うと、
 「0.03125秒」以下の誤差を言っていることになる。

 (中略)

 早足のテンポの一拍は、普通、メトロノーム120くらいだ。
 一拍は0.5秒である。
 途中を省くが、
 この一拍を八つに割った三十二分音符などはしょっちゅう出てくる。

 これ一個が0.0625秒だ。

 その音の出がちょっと早いとか遅いなどと言うわけで、
 「ちょっと」は0.03125秒以下ということになる。

ここでも、0.03秒という数字が出て来た。
人間の感覚というのは、1秒よりもはるか細かい所で働いている。
これも生きるために必要な能力として、進化したのだろうか。

テレビとかオーケストラとかいう世界ではなくても、
日常の会話の中で(相づちとか頷きのタイミングとか)、
きっとものすごく大事な働きをしているんだろうな。

1秒より小さな時間も、馬鹿にできないですよ。


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by ton2_net | 2015-10-31 18:46 | おすすめ作品 | Trackback | Comments(0)
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