小さい頃は、春っていう季節があまり好きではなかった。
なんか、むわっと生暖かいし。
多分、「春っていいよね」というメジャーな考え方があるような気がして、
そこに反抗したいという感じだったのかもしれない。
でも、大学生になって、冬山に登り始めた一年生の冬、
それはとても寒くて辛くて、
この冬に終わりは来るのか…なんて思っていた時期に、それは来た。
多分、日曜日だったと思うんだけど、なんとなくふらふらっと外を散歩していたら、
唐突に、ふっと春のにおいを感じた。
周りをみると、猫がひなたぼっこしていた。
僕はかがんで、足下の雑草を良く見てみたら、
小さな虫が、一生懸命に動いていた。
月並みで、平凡で、当たり前の事だけど、そのとき確信に近い感覚で、思った。
春は来るんだなぁ、と。
その時以来、春という季節の良さが、素直に分かるようになったと思う。
でも、今思うと、この経験から学んだ事は、
春のことではなくて、冬のことについてなのかもしれないな、と
温かい日差しの中を、お気に入りのカレー屋さんまでの道のりで考えたのでした。