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新しくなったton2net



どういうことをやっているかというと(RIBFのさわりのさわり)

朝に「今日はビームが出ません」というお達しがあって、それきり。
これで事実上24日に実験が及ぶことが確定したことになる。
今年のクリスマスプレゼントは修士論文のネタ・・・にちゃんとなってくれるといいのですが。

お昼ご飯の帰り道に加速器関連の方にお会いして、
「いやぁ、参りましたね、ははは」
と皆で笑うしかない感じになった。
「10年に一度しか壊れない部品が壊れた感じですね」
とおっしゃっていた。

理研の最新の加速器、SRCの前段のIRCまでは絶好調らしいのだが、SRCの諸々が不調らしい。

では、せっかくなので、理研のRIBF施設(のさわりのさわり)をご紹介しよう。
(図は
  http://www.rarf.riken.go.jp/newcontents/contents/facility/RIBF.htmlより
 正規分布の図は
 http://sinzo.web.infoseek.co.jp/joho/kodogozen/01kagaku/008/point008.htm
 からいただきました。)

加速器の世界において重要な量が二つある。
それは「強度」と「エネルギー」である。
「強度」とは「加速できる粒子の量」(すなわち、加速された粒子から作られる不安定核の量)であり
「エネルギー」は「粒子の運動エネルギーをどれだけ上げられるか?」
という量である。
この量に加えて、「元素番号どの粒子まで加速できますか?」ということが重要になる。
(理研の施設では水素からウランまで天然元素すべてを加速できる)

さて、ではなぜ「強度」「エネルギー」が重要になるのでしょうか?
原子核の世界を旅するのに欠かせない地図である、次の図を見てみましょう。

・ 核図表(クリックで拡大)
どういうことをやっているかというと(RIBFのさわりのさわり)_e0126903_167198.jpg

この図を見てわかっていただきたいことを大まかに書くと、図の中に緑色の矢印があります、と。
そして、この矢印を通ってウランまでの原子核が合成されたと考えられている。
(宇宙が出来て間もない頃には水素しかなかった)

しかし、図を見るとその緑色の矢印のほとんどは水色とピンクで塗られた領域を通っている。
この領域は、「人間がまだ一回もつくったことのない原子核の種類」を表す領域なのだ。

だから、この緑色の矢印が通る原子核を片っ端から作ってやって性質をしらべれば、
宇宙が始まってからどうやって今宇宙に存在する様々な原子核ができたのか、がわかる。
で、この水色とピンク色の領域の原子核は、全部理研RIBF(Radio Isotope Beam Factory)
という施設でできるんだ、と言っているわけですね。

もう一度核図表を見てみると、黒い四角がありますね。
これは自然界に存在する安定した元素。
これを加速して、他の元素にぶつけるor分裂させて不安定な核を作るわけです。

なので、スタートは黒四角。
黒四角から離れれば離れるほどその原子核ができる確率は小さくなるわけです。
何か物理量を測ろうと思えば、「統計的な不確かさ」というものがつきまとってきます。
これは、簡単に言えば
「これ、実験したって言ってるけど、このときはたまたまこういう値になっただけなんじゃないの?」
という質問に対して
「いや、でもこの値が±3σ(そのデータを正規分布でフィットしたときの半値幅の3倍)以上
ずれる値をとることは0.26%しかない
んだよ!だからこの値は信用できるでしょう?」
確率的にその実験データの信頼性を保障できるようにするための量である。

※ちなみに、1σ以上ずれる確率は31.74%
        2σ以上ずれる確率は 4.56%(覚えやすい)
        3σ以上ずれる確率は 0.26%だから、
1σの間に正規分布は急速に小さくなるものの±1σの間に7割近くのデータが収まり、
それからゆるやかに小さくなっていってtailを引くことが分かる。
正規分布の中心からσ離れたところが、正規分布の変曲点です。
どういうことをやっているかというと(RIBFのさわりのさわり)_e0126903_20202854.gif


このσを小さくすればするほど、実験値をなるべく正確に(幅を小さくして)記述できるようになる。
統計的不確かさというのは測定値が増えれば増えるほど小さくなるので、
RIBFで作ることの出来る不安定な原子核の数を決める「強度」が大切になってくるのである。


また、何か反応を起こして不安定な原子核を作ろうと思う時、
「その反応が起こるために必要なエネルギー」(反応のQ値とか言ったりする)
以上のエネルギーで元の原子核を加速しなければならない。
(たとえば、あなたが床におとしたペンを机に戻そうとした時、
机以上の高さに上げて机の上にペンを落とせばペンは机に戻るが、
机の高さより下で手を離してしまえば絶対に机の上にペンが戻ることはないであろう。
この「机までの高さ」が、「ペンを床から机に戻すためのQ値」に対応する。)

様々な反応を起こして多くの種類の不安定な原子核を作ろうと思えば、低いエネルギーから高い
エネルギーまで多くの幅を持っているほうが、有利なのである。


それで!
理研のRIBF施設の加速器たちはこの「強度」と「エネルギー」を十分出すことができて、
原子核の起源解明などに貢献できるに違いない、というわけなのですね。


さて、RIBFの加速器には以下のようなものがあります。
・ RIBF加速器
どういうことをやっているかというと(RIBFのさわりのさわり)_e0126903_1642219.jpg

今、このSRCで問題が起こっていて、この前段のIRCまではすごく順調にビームが来ているという
ことですね。
(建設中と書いてあるがもうBigRIPSまでビームを出した実験が過去にも行なわれている)

・・・読み返すと非常に分かりにくい。
難しいですね。こういうことを説明するのは。
でもこういうことが仕事に出来たらいいな。
(今日の記事を読んだ方、感想をくれたら嬉しいです。
 「ここまで読んであとは読み飛ばした」という方も、その場所をぜひ!!
 (殴り書きでいいですので。))


それにしても、25日にはつくばに帰れるのでしょうか。
by ton2_net | 2009-12-22 16:47 | 物理学
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Ooishiです。こちらに切り替えようと思っています。https://ton2net.com/
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